みなさんは、ピラティスというとどんなイメージを持っていますか?
なんとなく「ピラティス」という言葉は知っているけれど、エクササイズの内容やヨガとの違いがわからない人が多いのではないでしょうか。
ピラティスとは簡単にいうと、「ジョセフ・ピラティス氏が提唱したメソッドで、背骨や骨盤の動きを中心にして全身のバランスを整えるエクササイズ」です。
エクササイズ=筋肉というイメージが強いかもしれませんが、ピラティスでは背骨や骨盤の動かし方が大切になってきます。
この記事では、ピラティスの起源や効果・ヨガとの違いについて、ピラティスの初心者にも分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
ピラティスはドイツで生まれた100年続くエクササイズ
ピラティスの発案者ジョセフ・ピラティス氏は、1880年にドイツで生まれました。
幼少期は病弱だったため、病を克服するためにトレーニングとして体操選手を目指し、やがてサーカス芸人として活躍しました。
第一次世界大戦が勃発した1914年、ピラティス氏はドイツのサーカス団の一員としてイングランド巡業に参加していましたが、敵国人として捕らわれてしまいます。
イギリスのマン島収容所に拘留されている時、猫の身体の動きから発想を得て、新たな身体訓練法を考案。
収容所にあった病院のベッドを利用して作った器具が、現在も使われている「キャデラック」の原型といわれています。
独自のワークアウトメソッドを作り出したピラティス氏は、収容所の囚人たちを指導するようになりました。
1918年にスペイン風邪が大流行しましたが、ピラティス氏のメソッドを実践していた人たちは、誰1人として感染しなかったそうです。
終戦後にアメリカに渡ったピラティス氏は、ニューヨークでスタジオを開き、ダンサーや俳優にメソッドを広め、評判になります。
その後、ピラティス氏が指導した弟子が独立してスタジオを開き、現在では1700万人以上の人がピラティスを楽しんでいます。
ピラティスに期待できる3つの効果
ピラティスに期待できる効果はたくさんありますが、ここでは以下の3つについて解説します。
それぞれ効果について詳しく見ていきましょう。
ダイエットや運動不足解消
ピラティスを行うことで全身の筋肉がバランスよく鍛えられると、基礎代謝が上がり、脂肪燃焼効果が高まります。
そのため体脂肪の減少やシェイプアップはもちろん、太りにくい身体を手に入れることもできます。
特に、お腹周りの体幹を鍛えると、内臓を支える力がついて本来の正しい位置に戻り、スッキリして見えます。
ピラティスは、運動不足解消の効果も絶大です。
運動不足解消のためにランニングやウォーキングに取り組む人は多いですが、1人ではなかなか続かないでしょう。
でもピラティスを始めてレッスンに通えば、定期的に運動する習慣が身につきます。
目的に合わせて、ピラティスに通う頻度を調整するのも大切です。
インナーマッスル強化による姿勢改善
ピラティスでは、身体の内側についているインナーマッスルを鍛えることを重視します。
インナーマッスルは「姿勢保持筋」と呼ばれるほど、正しい姿勢づくりに大切な役割を果たしています。
正しい姿勢を維持するためには、特に体幹のインナーマッスルである腹横筋・横隔膜多裂筋(背骨まわりにある筋肉)・骨盤底筋群を鍛えることが重要です。
これらの4種のインナーマッスル(コアマッスル)を鍛えると、背骨や骨盤を支え自然と美しい姿勢を維持できるようになります。
姿勢が良くなると、猫背や肩こり・腰痛といった身体の悩みも改善していきます。
ピラティスを続けていると身体の使い方がわかってくるので、日常生活の中でも身体の使い方を意識するようになります。
普段から身体の使い方を意識すると、より早く変化を実感できるでしょう。
ストレスの軽減や睡眠の質向上
ピラティスは、呼吸と身体の動きを連動させることによって動きの速度が安定し、心拍数や血圧が必要以上に上昇することを抑えられるため、リラックス効果が期待できます。
さらに、深い呼吸で心拍数を安定させて血圧を下げ、筋肉をほぐすことで脳への酸素供給を増加させるので、ストレスや不安を軽減する効果もあります。
また、ピラティスは睡眠の質を改善するエクササイズであることが実証されています。
ピラティスで行う胸式呼吸は、横隔膜を動かして腹横筋や骨盤底筋といった腸の周辺を刺激します。
腸は「第二の脳」とも言われるように独自の神経系があるため、呼吸によって刺激することで活性化し、セロトニンの分泌が促進されます。
セロトニンは睡眠ホルモンと言われるメラトニンの原料となります。
ピラティスの呼吸と動きによって分泌されたセロトニンの働きで、睡眠の質が向上するのです。
ピラティスとヨガの違いは?
ピラティスとヨガは、身体のゆがみを整えたり、柔軟性を高めたり、代謝がアップしたりという共通点があります。
似たポーズも多いため、よく混同されがちですよね。一方で、明確な違いもあります。ポイントは下記のとおりです。
目的・呼吸法・動き方について、ピラティスとヨガの違いを解説します。
ピラティスは身体を強化し、ヨガは心身の統一を目指す
ピラティスはリハビリのためのトレーニングとして発展してきた経緯があり、身体に負担をかけずに筋力をつけ、バランスの整った身体を作ることが主な目的です。
そのために、身体の中心部にあるインナーマッスルを鍛え、骨盤や背骨などのゆがみを改善していきます。
一方、ヨガは古代インドの修行法や瞑想法をルーツとしていて、身体よりも精神的な面にアプローチします。
ポーズや呼吸法、瞑想によって精神を統一し、心と体を安定した状態にすることが目的です。
ヨガも筋肉を鍛えたり柔軟性が高まったりする効果がありますが、精神面の安定をメインとしている点で、身体作りを重視するピラティスとは違いがあります。
ピラティスは胸式呼吸、ヨガは腹式呼吸を基本とする
ピラティスとヨガは、呼吸法にも違いがあります。
ピラティスの呼吸法は、胸式呼吸。お腹を凹ませたまま、肋骨を全体的に広げて胸に息を入れるように鼻から吸い、吐く時はろうそくを吹き消すように口から吐きます。
胸式呼吸は活動時に活発化する交感神経を優位にする働きがあるため、脳が活性化され頭も身体もすっきりとして集中力が高まります。
ヨガで使う腹式呼吸は、お腹を膨らませるように鼻からゆっくり息を吸って、お腹をへこませるように鼻から吐く呼吸法です。
ヨガのポーズをとりながらゆっくりと腹式呼吸を行うことで、リラックスした時に活発化する副交感神経が優位になり、心身ともに安定します。
どちらの呼吸法も、身体を動かすことに集中すると止まってしまうことがあるので、しっかりと呼吸を意識しながら取り組むことが大切です。
ピラティスは動きがベース、ヨガは静止状態がベース
ピラティスでは、止まることなく流れるように身体を動かし続けるのが基本です。
ただし、単に身体を動かすだけでなく、骨盤の位置や鍛えている部位など自分の内面にも意識を向けながら行うため、ピラティスは「動く瞑想」とも呼ばれています。
一方ヨガは、ストレッチするようなポーズで静止する時間が多いのが特徴です。ポーズをとってキープし、深い腹式呼吸を繰り返しながらポーズを深めていきます。
ヨガの中でもパワーヨガは、立ち姿勢で全身を使うポーズが多いため、運動量が多くなります。
ピラティスに向いている人の特徴
ピラティスに向いているのは、次のような人です。
ピラティスはインナーマッスルを鍛えて体幹を強化するため、姿勢を改善してしなやかな体づくりをしたい人に向いています。
運動量もあるため、継続して行えばダイエット効果も期待できるでしょう。
ピラティスは体の状態や鍛えている部位を意識しながらエクササイズを行うので、自分の体と向き合いたい人にも最適。
また、ピラティスを行うことで更年期症状が緩和されたという研究もあり、リラックス効果やストレス解消効果もあるピラティスは、更年期症状が心配な人にもおすすめです。
ピラティスに向いていない人
一方で、ピラティスに向いていない人もいます。次のような人は、別のエクササイズや方法を試しましょう。
ピラティスは、長期的に継続して行うことで、徐々に体型が変わったり体の不調が改善したりといった効果を得られます。
ダイエットも含めて、すぐに効果を出したい人には向いていません。
ピラティスは体の中心部にあるインナーマッスルをメインに鍛えるので、外から見てわかるアウターマッスルを鍛えたい人にもおすすめできません。
ピラティスはリハビリ療法を起源としていますが、体に深刻な痛みや不調がある場合は控えましょう。
ピラティスに関するよくある質問と回答
最後に、ピラティスを始めようと思っている人が気になる質問に答えていきます。
- ピラティスは自宅でもできる?
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リフォーマーなどの専用器具を使うマシンピラティスはスタジオに行かないとできませんが、マットピラティスならヨガマットさえあれば自宅でもピラティスができます。
ただ、マットピラティスは自分の体重を負荷にしてエクササイズを行うため、ある程度筋力が必要で、初心者には難しいと言われています。
初心者さんが動画を見たりしながら独学でピラティスをやろうとすると、正しい動きができなかったりケガをしてしまう可能性もあります。
初めてピラティスに挑戦する人やまだ慣れていない人が自宅でピラティスをする場合は、オンラインレッスンを受けるのがおすすめです。
インストラクターとオンラインでつながるレッスンなら、動き方や身体の使い方を指摘してもらえるので、自宅にいながらスタジオに通うのと同じようにレッスンを受けられます。
- 男性でもピラティスはできますか?
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ピラティスは女性がやるイメージが強いかもしれませんが、老若男女だれにでも合うエクササイズなので、もちろん男性でもできます。
考案したジョセフ・ピラティス氏も男性ですし、彼が最初に指導した負傷兵も男性でした。特に、マシンピラティスはスプリングで負荷の調整ができるため、男性も自分に合った負荷でエクササイズを行うことができます。
注意点としては、スタジオに通う場合、女性専用のスタジオが多いことです。ホームページには男性利用について記載されていないこともあるので、直接問い合わせてみましょう。